為替相場のゆかいな大人たち(1)日銀砲の生態

為替相場のゆかいな大人たち

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日銀砲の歴史

日銀砲の歴史

毎度お馴染み流浪のブログ、極度の金です。
ローソク足シリーズ・きほんてきなはなしシリーズと並行して、
為替相場のゆかいな大人たちシリーズを新たに始めます。
今回は、為替相場の大人の頂点、中央銀行について深堀りします。
介入の話から緩和の影響まで、為替相場でどのようなことが起きるのかについて研究していきます。
不定期連載となりますが、よろしくお願いします。

日銀砲だなんだって聞くけどほんとに介入してるの?

ドル/円の下落トレンドなどでは、急に信じられない量の大口の買いが入ることがあります。
そんな時、トレーダーたち間では、
「介入だぁ〜逃げろ〜!」だとか
「黒田✳︎日銀総裁:黒田東彦(76)、総裁任命:平成25年3月〜)の無限ナンピン買い」とか
「ぎゃああああ 狩られたああああああああ」といった
楽しそうな悲鳴と断末魔が飛び交います。
今回は、日銀がそんな頻繁に介入なんかするの?
という根本的な疑問について研究してみましょう。

日本銀行の為替介入について

経済の世界で、いわゆる「介入」が入るのはどんな時でしょうか。
また、どのような根拠でそのようなことが許されるのでしょうか。
そもそも、「介入」とは何かということをスタートラインにして考えてみましょう。
こういうことは一次ソースにあたるのが一番です。
日本銀行のホームページにこのような説明があります。
これを読みこむと、
①中央銀行が行う「為替介入」の正式名称は「外国為替平衡操作」であること
②「為替介入」が行われる目的は、為替相場の安定化であること
財務大臣の指示に基づいて実務を遂行するということと
④財務省の外国為替資金特別会計の資金を使うこと、
④介入が行われた場合は、毎日その報告を行うこと
などがわかります。

しかし、犯人は、この国の財務大臣なんだな!俺のポジション返せ!
とは直ちにはなりません。

「為替介入」の実施状況

じゃあ、どのくらいやってんだ?と日銀HPで調べようとすると、実施状況については財務省HPに行けよと塩対応で速攻たらい回しにされました。
リンクを押すと財務省の該当ページでなく、財務省トップページに連れて行かれました。
イチから探せと・・・仕方ないので探しました。
ここです。
「よ〜し父さん日銀の悪事を暴いちゃうぞ〜」
と勢い勇んでファイルを開きます。

介入ゼロ

最新データによると、令和2年3/30から4/27までの為替介入は0円です。
何かの間違いかな?隠してんだろ!全部見せろ!
とさらに過去を調べても、平成23年(2011)11/4の介入を最後に為替介入は一度も行われていません。

逆にどんな時に介入したのよ?

平成23年の出来事というと、東日本大震災の年です。この年、日本円は未曾有の買いに襲われました。
損保会社の巨額な日本円での保険金支払いを見越して、大災害発生をいいことに海外ヘッジファンドなどが円買いの仕掛けをしたとか言われています。
底は10/31に付けた ドル/円 75.565 です。
そんな時の介入ですから、日本の危機には動いたんだなぁと感慨深くなりますね。
ちなみに当時の総裁は、白川方明総裁で、財務大臣は野田佳彦、安住淳とのことです。
日銀と財務大臣の悪事を暴いている途中でした。
続けます。
さらに見ると、震災前の平成22年(2010)9/15にも為替介入をしています。
ここでは、ドル/円 82.874 を付け、民主政権のもと円高にすぎると為替介入が行われました。
その直後、ドル/円は85.931 まで急激に円安が進みました。
実に305.7pipsの変動です。
当時の財務大臣は、野田佳彦です。今これをやられたらと考えるとゾッとしますね。
この為替介入は、外国との協調もなく、単独介入としてかなり異例なもので、相当海外からは叩かれたようです。
まぁその後の震災での単独介入の心理的障壁がここで取れたわけですから、結果オーライというかラッキーでしたね。
トレーダーにとってはたまったもんじゃないですが。

平成22年以前の為替介入

さらに過去に遡って、日銀の為替介入を見てみましょう。
どうせリーマンショックの時にやったぐらいでしょと思っていましたが、意外な事実が浮かびます。
リーマンショックは平成20年(2008)9月に起こりました。
しかし、平成20年に日銀の為替介入は行われていません。
平成16年(2004)3/16から、先ほど挙げた平成22年(2010)9/15まで、為替介入は行われていないのです。
また、平成16年(2004)3/16以前は、頻繁に為替介入が行われています。
これは、当時の日米独による「協調的為替・金融政策」によるもので、いわゆる日銀砲が最も猛威を振るったのがこの頃です。
FXが個人投資家に開放されたのが、1998年ですから、この辺りの肉染みの思い出を語れる人がいれば古参レベルのトレーダーということになります。

当時のトレーダーの間で語り継がれる伝説

125 山師さん@トレード中[] 投稿日:2006/11/15(水) 14:56:54 ID:ngBWwV8j
【日銀砲】
日銀上司「いいか、これから1分ごとに10億円づつ円売りドル買い介入を行う」
日銀部下「1分ごとに10億円も?」
日銀上司「そうだ1分ごとに淡々と売り続けるんだ。これから24時間売り続けるんだ。」
日銀部下「24時間ですか?」
日銀上司「そうだ。為替相場に終わりは無いんだ。もちろん交代要員も用意してあるが出来るだけ頑張ってくれ。」
日銀部下「はー、、。でも1分間に10億円だと1日に1兆円以上の資金が必要ですが?」
日銀上司「今、30兆円用意してある。当面はこれを使う」
日銀部下「それを使い切ったらどうするんですか?」
日銀上司「財務省が保有している200兆円もの米国債のうち、比較的短期のものを最大100兆円売って新たな介入資金を作る」
日銀部下「米国債なんか売っちゃっていいんですか?」
日銀上司「円売りで買ったドルで新たに米国債を買い、国庫に返還するので問題は無い。とにかく相手が折れるまで淡々と売り続けるんだ。休んだらヘッジの思う壺だ」
これを35日間続けました。
この結果アメリカのヘッジが2000社倒産しました。
また、行方不明になったり自殺した人も大量にいました。 

これは日銀砲で最も有名なコピペの一つです。
当時のログを掘ってみましたが、初出についてはわかりませんでした。
2004年当時、日銀砲は、「谷垣(塩川)日銀砲」と呼ばれ、恐怖の対象そのものだったようです。
なお、現在では、このコピペに対して財務大臣の裁量なんだから「日銀砲」の名称は相応しくないとか、介入の日数が違うとか、金額が違うとか色々ツッコミが入っています。
仕方ないね。

「日銀砲」に備える

以上のように、いわゆる「為替介入」のかたちで日銀砲が撃たれたことは2011年11月以降一度もないことがわかりました。
しかし、麻生財務大臣の気がいつ変わるかはわかりません。
最近の流行では、直接的な「為替介入」とは別の方法で、日銀砲が撃たれています。
ETFの無限買いとかその辺りの話ですね。
ETFについての話は次回以降。
また、万が一再び「為替介入」の形で日銀砲が撃たれた時の対応の参考として、一応以下のページが参考になるかと思います。
この日本銀行金融研究所が刊行している「日本銀行の機能と業務」の、第5章 金融調整、p128に、オペレーション関連事務の1日の業務の流れがあります。
日本の公務員や行政官に準じる「準公務員」の業務ですから、似たような業務を叩き台にして業務の流れを作っている可能性もあると思います。

私は元地方公務員でもありますが、この種の、毎年あるわけではないが頻繁に行われる業務は各部署に業務内容を照会しますし、人員も似た業務をやったことのある人が配置されがちでした。
この資料のスケジュールを参考にする価値はあるのではないかと思われます。
為替や株式のETFでは性質上入札は行われないでしょうし、定型の時間で区切ったタイミングでの買い入れと、口先・レートチェックによる介入を並行で走らせる可能性もあるでしょう。
なお、介入が海外の中央銀行に委託された時については実態がよくわからないのが現状です。

まとめ

いわゆる「為替介入」という形では、日銀は市場に手を出していないのが現実です。
しかし、最近の各国中央銀行の動きは、しばしば市場に激震を走らせています。
日銀の介入の仕方、各国の介入の仕方が当時とは別の形に変化していると解釈するのが妥当でしょう。
では、より直接的な値動きで投資家が根こそぎ狩られる恐怖は、過去よりも弱まっているのでしょうか。
私、気になります。
次回以降、キーワードとなる中央銀行の「量的緩和」「金融緩和」の実施状況とその方法について研究していく予定です。
今後のシリーズもよろしくお願いします。

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